4月23日、「昭和解体」の著者・牧久氏(元日経新聞記者・ジャーナリスト)による「暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史」(小学館)が発売された。
私たちJR九州労組は、JR連合とともに「民主的な労働組合と健全で建設的な労使関係」を構築してきたが、JR労働界には私たちと思想の異なる他労組「JR総連」が存在している。この書籍では、JR総連の前身である「動労」と、動労を率いた「松﨑明」氏の実態が綴られ、JR労働界の歴史が内外にアピールされており、その概要の一部を組合員の皆さんにお知らせする。
「昭和解体」は、昭和最後の20年に起きた日本の政治経済最大の事件である「国鉄分割・民営化」の「30年目の真実」として、当時の国鉄当局と国鉄労働組合を焦点に描かれた。今回の「暴君」では、動労、JR東労組の中央執行委員長にして、警察庁が「革マル派創設時の副議長」と指摘し、革マル派の実質的な指導者と見られた「松崎明」氏にスポットを当てた。
牧氏は松崎氏について『日本の労働運動が燃え上がった戦後昭和で、もっとも先鋭的で過激な活動を繰り広げた「動労」(国鉄動力車労働組合)の闘士として、当局の合理化(リストラ)に猛然と反発、…〝鬼の動労〟の象徴的存在だった。しかし、1980年代後半、中曽根政権が進めた国鉄の分割・民営化に徹底抗戦する国労を切り捨て、それまで犬猿の仲だった「鉄労」(鉄道労働組合)と手を組み、組織を挙げて労使協調・民営化賛成に回り、大転換の先頭に立った。〝松崎のコペルニクス的転換(コぺ転)〟とも呼ばれたこの男の見事な〝変心 〟によって国労は瓦解し、国鉄分割・民営化は軌道に乗って走り始める。松崎は「国鉄改革」の最大の功績者のひとりとなったのだ。そして、民営化後、崩壊した国労に替わりJRの組合を率い、会社側にも「影の社長」のような権勢をふるうことになる。…だが、松崎には、労働組合の“名士”とは別の、もうひとつの顔があった。非公然部隊を組織し、陰惨な〝内ゲバ〟で数々の殺人・傷害事件を起こしてきた新左翼組織「革マル派」の幹部でもあったのだ』と表現した。
そして、松崎氏が「ニアリー・イコール」という論理で会社経営への容喙を宣言し、“労使蜜月”の関係のもと、まさに「JRの妖怪」と変貌していく様を詳細に描いている。
さらに、最後には『三万四五〇〇人の大脱走』の章で、2018春季生活闘争におけるスト権行使に伴うJR東労組の組合員大量脱退について、「労使共同宣言の失効」により〝労使癒着〟に完全に終止符が打たれたことにも触れた。また、今年度から400億円台の財政支援を受けるJR北海道で2011年の石勝線列車事故後、3年足らずの間に社長経験者が2人も入水自殺したことについて、『その異常事態の深層に迫る調査報道は皆無といっていい。かつてマスメディアのタブーとなったJRの妖怪・松崎明の〝亡霊〟はいつまで北の大地を彷徨い続けるのだろうか』と、現状を憂えた。
更新日:2019-05-17 12:00