熊本地本は、4月7日、宇城市「三角公民館」で2017年度地本・分会役員セミナーを開催し、地本・分会役員と議員団など25人が参加した。今年度のセミナーは、「鉄道特性の発揮と地方線区活性化にむけて~熊本からの挑戦~」をテーマに三部構成とした。熊本県内の公共交通の現状やJR連合が提唱している交通政策に理解を深め、今後の地方線区活性化にむけた運動につなげる目的で開催したものである。
第一部は、「熊本県における公共交通の現状と課題」と題し、熊本学園大学元学長でシニア客員教授を務める坂本正氏から講演を受けた。坂本教授は、県都・熊本市で進められているJR熊本駅前開発(熊本駅高架化等)及び桜町開発(交通センター建て替え等)に関連して、「重要なのは立派な建物をつくることより、どのように交通と結節するかである」と述べて、地域における交通網の重要性を訴えた。
また、全国で3例目となる熊本市の交通基本条例制定に携わった経験から、「熊本市の条例には『3つの責任』を明記した。それは、自治体の責務(最後まで責任を持つ)、事業者の責務(運行に責任を持つ)、市民の責務(利用する責任)である」として、それぞれの関係主体が役割を果たす重要性を強調した。
さらに、小泉政権以降は新自由主義的な風潮が強まっているものの、民間企業でも利益が出る事業で不採算部門を支えることができる仕組みを考えていくべきと述べた。そして、旧国鉄高森線・湯前線・山野線廃止反対運動の経験から「どこかで踏み留まっていれば、何かが生まれる」として、地方線区の利用促進・存続にむけて、労働組合が地域とともにその状況をつくり、具体的な提案をしていくよう提言した。
第二部は、JR連合の交通政策部長である中村鉄平氏から「将来に夢と希望を持てる鉄道・公共交通の創出をめざして」と題する講演を受けた。
中村部長からは、「わが国の公共交通はいずれも厳しい状況に置かれているが、JRだけのエゴに陥らないことが必要」「地域にとって何が本当に大切なのか、住民全体で議論していかなければならない課題」との基本的な考え方を示した。
さらに、交通政策基本法の制定後、全国で地域公共交通網形成計画が相次いで策定されていることについて、「計画をつくるだけではなく、それを実施・検証することが大事」と住民目線の取り組みが必要であることを訴え、自治体への交通政策担当者の配置を進めるべきとの考えを示した。
第三部では、地本の大川敏廣交通政策部長が「今後の熊本地本の取り組み」として、以下の4点について提起した。
1.「交通重点政策2018‐2019」の実現
5月12日(土)に熊本市で交通重点政策意見交換会を開催する。また、政党・自治体・労働団体等への働きかけも行う。
2.鉄道の災害復旧、安全・防災対策の強化
「鉄道軌道整備法」の法案審議の動向に引き続き注視し、豊肥本線及び南阿蘇鉄道の一日も早い復旧を訴えていく。
3.鉄道設備の維持更新への対応
他の社会資本(道路・河川・港湾等)に準じた公共財としての補助・支援スキームの更なる拡充と財源確保を訴えていく。
4.地方線区の利活用にむけた連携強化
交通モード間の連携強化を図るため交通関係の他産別・単組と意見交換を行い、組織内議員や連合熊本推薦議員を通じた自治体の実態把握に努める。
熊本地方本部は、今後もJR連合が提唱する「チーム公共交通」「チーム地域共創」の形成にむけた具体的な取り組みを熊本県内で展開していく。今回の地本・分会役員セミナーは、そのキックオフとして、有識者・JR連合・議員団も交えた実り多い取り組みとなった。
更新日:2018-04-27 11:02